スーサイド


マレの理想郷


マレ:キジムオバーさんはいらっしゃいますか?

オバー:ワタシがキジムですけど、どちら様ですか?

マレ:はじめまして、私は一羽渡り鳥のマレ。昨日どこの島にやってまいりました。

オバー:それはご苦労様です。一羽さんはなんでも自分でこなさいないといけないから大変でしょう⁉

マレ:もう慣れっこですが、まだ上手くいかないことも多く、ジムオバーさんいお話を聞いていただくて

オバー:話を聞くだけでお役に立てるなら。

マレ:ありがとうございます。

オバー:それじゃ島でも案内しながら聞こうかね。

マレ:あの、さしつかえなければ、「スーサイド」という名の海岸に行ってみたいのですが

オバー:いいでですよ。それじゃ行きましょうか

マレ:よろしくお願いします。



【スーサイドレビュー】

マレがオバーに頼んで連れてきてもらった「スーサイド」は、沖縄県南部の糸満市にあり、地元ではサーファーの集う海岸として親しまれています。

ただし、スーサイドには海水浴を楽しむための設備はありませんので、海で遊ぶことに慣れた人でないと気軽に楽しむことができません。

リーフの端が海岸線に近いので沖までいかなくても波も良く割れるのですが、水深が浅く満潮時を狙わないと安全にサーフィンを楽しむことが難しいのでご注意くださいね♪



マレ:ここがスーサイドですか、険しい海岸ですね。

オバー:そうね、あまり海水浴に向いてる海岸じゃないわね。

マレ:人間は奇妙なところを好むのですね

オバー:私たち鳥だって似たようなものよw

マレ:似たようなものか… キジムオバーさんはこの海岸の別名ご存じですか。

オバー:シーサイドクリフ、自殺の崖。この島に残る悲しい過去のひとつね。

マレ:私は人がうらやましい。

オバー:なぜだい?

マレ:その気になれば自分の意思で生死を決めることができる。

オバー:そうだね。





マレ:自由を求めて長いこと自分だけでこの世界を旅してきましたが、どこにも自分が理想とする場所はありませんでした。

オバー:まー 簡単には見つからないね。

マレ:年老いて死ぬまでこんな一人旅を続けるのかと考えると、なんか疲れてしまって。

オバー:生きることを終わらせたいのかい?

マレ:はい。でも踏ん切りがつず答えを探してて、この海岸の名前とキジムオバーさんのことを知ったんです。

オバー:なるほどね。で踏ん切りはつきそうかい?

マレ:…つかないです。

オバー:この海岸、よく波が割れてるでしょ?

マレ:いわれてみればそうですね





オバー:この波を好む人も多くて、そういった人間が多く集まる海岸でもあるのよ

マレ:そうなんですか

オバー:自殺の崖も、今や生きることを楽しむ場所になってるのよ

マレ:生きることを楽しむ場所…想像もしてなかったです

オバー:生きていく中で不安や不満ってなくなることはないの。

マレ:その通りだと思います

オバー:でもそれをどうとらえるか、視点を変えることは自由よね?

マレ:視点を変える…





オバー:この海岸に悲しい歴史があった時代、多くの人は”自由に生きる”という選択肢を理不尽に奪われていたの。望んで生きることを終わらせてたわけじゃないのよ。

マレ:選択肢を奪われていた…

オバー:時代が変わった今、”自由に生きる場所”のシンボルとしてこの海岸は存在してる。

マレ:自由を奪われた場所が、自由を楽しむ場所になる…

オバー:今も昔もこの場所は変わらないのにね。

マレ:何を選ぶかは自由…

オバー:自由って気楽なようで大変なのよねw

マレ:ホントそう思いますw

オバー:それじゃ自分の自由を誰かに渡しちゃう⁉ 生きる意思決定も含めて。

マレ:そう考えると嫌ですね

オバー:でしょw でも、マレは生きる意味を誰かに押し付けようとしないだけでも立派だと思うわ。

マレ:…そんな風に考えたことなかった





オバー:良いこと悪いこと色々あるけど、その原因となった判断を誰かのせいにしない。たったこれだけで自由って手の入るの

マレ:判断を間違ったとしても、次に別の選択肢が試せるってことですか?

オバー:自分で選択し続ける限り、成功するまで終わらせる必要もないのよ。

マレ:なんとなくわかってきました。上手くいかないこともあるってことを受け止めて、そのうえでどうするかを考えればいいんですね? これが「赦し」ですか?

オバー:マレは賢いw

マレ:やっぱり来て良かった。キジムオバーさんありがとうございます!!

オバー:お役にたててなにより。

マレ:お話聞いてもらったおかげで、なんか元気をもらったような気がします。

オバー:それはお互い様だよ。こちらこそありがとうね。

マレ:また遊びにきますね! それでは失礼します!!

オバー:また来てくれるの楽しみに待ってるね~♪



END